
群馬県甘楽郡南牧村/長野県佐久市(標高1260m)
荒船山の西にある。佐久から荒船不動をへて、荒船に登る登山路にある。

荒船の湯で食事したその晩は、荒船湖道平川ダム駐車場で過ごした。ネイチャーストーブと炭を取り出し、枯葉を集めて焚き火で暖をとった。
翌日は冴えない天気だ。
8時過ぎまで寝てしまって、今にも降り始めそうな気配の中、いまいち気合が入らない。
天気予報もこれから崩れると言っているのでなおさらだ。
この気温では、降り始めたらたぶん雪になるかもしれない。
どうしようかと悩んだが、最悪引き返せばいいと決断。さっそく、車を内山峠へ向け走らせた。

内山峠のトンネルを抜け、空き地に車を止める。
気温はさらに低くなり、真冬並みの冷たさだ。果たして、無事に周回してこれるだろうか、と不安になる。
「林道星尾線」を荒船不動目指して静かに走り始める。
いざ走り始めてしまえば、もういつものように快適そのもの。天気の不安もどこかに消え去ってしまう。
静寂の林道に行き交う人も車の姿もない。
すっかり葉を落とした樹木、降り積もった落ち葉の眺めが晩秋の雰囲気をいっそう醸し出している。

集落を抜けると、舗装も荒れ始め、道幅も狭く勾配もきつくなってくる。
荒船不動の直前は壁のような坂になっていて何台かの車がここで止まっている。ここから先は車の進入は不可能だ。
車はあっても人気がまったくない。
冴えない天気の影響もあって、ひっそりとした周囲は少々不気味な印象さえ受ける。
ここから本格的な峠への登りに入るが、標高差は約200mとたいしたことはない。
木橋で何度か沢を渡る。山道は落ち葉に埋め尽くされ、一面セピア色に染まっている。
「シャリ、シャリ」という落ち葉を踏みしめる最高のサウンドに酔いながら、晩秋の峠越えに魅了される。

二組のハイカーとすれ違い、挨拶を交わす。そしてまもなく星尾峠の切り通しと、乳白色の空が視界に入ってきた。
星尾峠までは、派手さや豪快さはないが、実に雰囲気のいい峠路を味わえる。
これで天気がよければ、暖かな木漏れ日の中、素敵なランチタイムを満喫することができたのだが、残念ながらいよいよポツポツと降り始めてきた。
あたり一面白く覆われ、視界が悪くなってきた。
汗が引くと体が冷え始め、ここでのんびりという訳にはいかなくなった。
写真を何枚か撮って、早めに下りにかかった。

峠からの下りは、かなりの急勾配で、大きな石や倒木が多く乗車率はほとんど期待できない。
線ケ滝への分岐から先は多少道も安定してくるが、それでもところどころ担がなければならないほどだ。
もっと快適に下れるかと想像していたのだが、登りに比べこれほど荒れているとは予想外だった。
ようやく後半になって走りやすくなってくるが、車が入り込んでくるらしく、今度はかなり深い轍に悩まされる。
湿ったダートに落ち葉、深い轍の中を走るにはなかなかテクニックが必要で、真剣にバランスをとって路面を見極めないと、ハンドルを取られて転倒してしまいそうだ。

林道から舗装路に合流してホッとする。ここからは田口峠へ向けて少々登り返す。
時刻は昼時をとうに過ぎ、かなり空腹になってきたが、田口峠でのんびり一杯やろうと頑張る。
峠はトンネルになっており、大きく田口峠と記された標柱が建っている。さっそくここに座って遅い昼飯となった。
いくらか展望が期待できるかなと思っていたが、やはりこの天気では無理で、さらにトンネル越に吹き抜ける風がつらい。
寒い中防寒着を着込むが、それでもやはりビールの味は格別だ。

ふと気がつくと野良犬がそばにいる。こんな場所に、どこからやってきたのだろうと考えてしまったが、かなり空腹の様子だ。峠にくれば誰かに何かもらえると思っているのだろう。
試しににおにぎりを一個差し出すと、そのままくわえて峠を下り、草むらに消えていった。
きっと子犬でもいるのだろう。5分ほどすると再び峠へ登ってきて、またウロウロしている。
野良にしては毛並みも綺麗でしっかりとした体型なので一安心なのだが、結局しばらくこの犬と時間を過ごしてしまい、おにぎり3つ、サンドイッチ1袋を提供してしまった。
この寒い中、どうやって生きていくのだろう。今日はたくさん食べられて良かったね、わんこ。

トンネルを越え、下りに入る。ここからのダウンヒルは、距離が長く、そして対向車も少なく道幅も十分あるためかなり楽しむことができる。
しかし、まったく気温の上がらない天候の中でのダウンヒルはかなり寒く、顔面から指先、足先まで久しぶりに痛さを感じる下りであった。
途中、たまらず缶コーヒーで暖まり一息入れるほどであった。
締めくくりは、国道を内山峠へ登り返すというやりたくなかったコースだ。カーサイの宿命とはいえ、登って終わりというのはいやなものだ。
それにも増して、峠までの直線的な道、そして最後のジャンプ台を登るようなヒルクライムにはさすがに参った。

